■ 2001.8月読書記録

 8/1 『桐原家の人々4 特殊恋愛理論』[茅田砂胡/中央公論新社・C☆NOVELS FANTASIA]

 どう考えても尋常ではない桐原家の物語、この作品で終幕とのことです。今回は零ちゃんが桐原家に引き取られてきた頃から話が始まり……これまでに語られていた過去の騒動の詳細が、主な内容かな。あと、零ちゃんの親友の話も。

 正直な話、これまで断片的ながらも語られてきたことを一話分として再構成した感じだから、あんまり新鮮味はなかったです。とはいえ、番外編というか過去の話をまとめて読めて、それなりにすっきりした感もありますが。

 そういえば、爆笑する事もなかったです。面白いことは面白かったのですが、なんというか、これまでの三つ子が主役だった話に比べると物足りなさがあるというか。これは零ちゃんが基本的に真面目だからか、先の展開を知っているからか……うぅむ。

 8/8 『上と外6 みんなの国』[恩田陸/幻冬舎文庫]

 約1年間、隔月で刊行されてきたシリーズ、この巻で無事完結。リアルタイムで付き合ってきたためか、妙に感慨深いです。

 何とか万事、丸く収まってくれましたね。毎回、思いもよらない方向に話が広がっていって、「これ、ちゃんと終わるんだろうか?」と不安になったりもしていたのですが。もう少しラストが盛り上がっても良かった気もするんですけれど、錬たちも日常に戻った訳ですから、これぐらいでよかったのかも。

 ただ、いまいち「成人式」を実行する意義が分からりませんでした。「民族の伝統を云々」って、それで説明終わり? 2巻(だったかな)で、思わせぶりな不思議現象まで持ち出しておいて?みたいな。その辺り、どうも物足りない気がして仕方がなかったです。

 8/10 『パラサイトムーンII 鼠達の狂宴』[渡瀬草一郎/電撃文庫]

 クトゥルーを一般受けするように味付けしなおしたという印象の物語。どうやらシリーズ化が決定したようです。なお、前回から主役が交代して、一般人(?)の女性になってます。

 今回の事件の発端は、冬華(今回の主役の名前)の家族にあるものの、彼女自身は自分の知らないところで事件に巻き込まれた、という感じですかね。その冬華と、迷宮神群の一つである黄昏の墓守・レブルバハトを巡る攻防が今回の物語の主軸。個人的にですが、「テーマは『愛』?」とか密かに思ってます(笑)

 えっと、感想。1巻よりも面白く感じました。登場人物が、たとえ悪役でも味のある人が多いのが好印象の原因かな。話自体は、これ一つできちんと完結しているから安心して読めるし。なにより筆力が平均以上にある方で、文章自体が読みやすいのが良し。

 それと、今回は物語の核になっている「迷宮神群」に関連する設定や人々についてもいろいろ出てきました。これに関しては、今後の展開に期待ですね。……しかし、果たして冬華の再登場はあるのかな? そして、『陰陽ノ京』の続編が出る可能性はあるんでしょうか? 私、あっちも気に入ってるんですけど(涙)

 独り言。……イラスト、女の子が可愛いのは認めてもいいんですけど……でも、やっぱりこの作品には合ってないと思うんだけどなぁ。というか、あの表紙はなんだか手にとりにくいです。いや、もちろんこれは私の個人的な意見ですけれど、でも正直な話、レジに持っていくの恥ずかしかったというか……ここまで抵抗感じてるの、私だけなんでしょうか?

 8/21 『よろずお直し業』[草上仁/徳間デュアル文庫]

戦場で死の抱擁を受けながら、生き長らえたいと強く願った青年・サバロ。彼の願いは叶えられ、二度目の生と奇妙な能力――目には見えない命のねじを巻き、あらゆるものを直す力を授かった。一切の記憶と引き換えに。
それからおよそ5年。サバロは「直し屋」として旅を続けていた。自分自身の心臓のねじを毎日少しずつ巻き戻しながら……。

 奇妙な能力を得た青年のもとに持ち込まれる、様々な修理の依頼を綴った連作短編集。購入した時はなんとなくコメディっぽい作品かな、と思っていたのですが、ハートウォーミング系の作品でした。

 どの作品も、心がじんわりと温まってくるような、いい話。巻き戻された僅かな命が呼び起こした物語に、静かな感動を覚えました。個人的には、最終話・「燃えた紙」終盤での、サバロと女性の会話がすごく好きです。

 派手なアクションの多い作品も勿論魅力的ですが、こういう癒し系の作品も好きですね。私は。

 8/30 『ミドリノツキ(中)』[岩本隆雄/ソノラマ文庫]

 近所の本屋の入荷状況悪い為(なにせ、新潮や集英社等の一般文庫ですら数日遅れる (-_-#)、大分出遅れた気もしますが。ようやく、『ミドリノツキ(中)』GETできました(嬉)

 読了後。「だ・か・ら、こんなところで切らないでよ~!!」と、上巻読了時と同じくのた打ち回りました。岩本さん、ヒキ上手すぎ。

 気を取り直して感想。とりあえず、上巻で出ていた伏線は大体この巻で回収できた感じかな? もっとも、この中巻でも色々と謎は出てきてますから先が気になる事に変わりはありませんが(苦笑) あと、ミリセントを取り巻く人間関係は、大体予想が当たったのでちょっと満足。

 下巻では、悪役二人の動向も気になりますが……それに輪をかけて、先人類の少女・イスティルが気になる。あきらかに、「何か隠してます」というオーラが見えるし(笑)

 そういう世界的な(?)陰謀とはまた違って、主人公の尚顕たちの交流も面白い……というか微笑ましくていい感じです。主役二人ももちろん良かったですが、個人的にはミリセント救出のために人力飛行機の改造に力を合わせるクラスメイトたちの場面が好き。そして、精神的に少々成長したようすの啓二にはなんだか安心しましたね。
 あと、タワーバードことピュンが可愛いです♪ ……よく分からないのですが、「萌え」って単語はこういう時に使うのでしょうか?

 以下、少々ネタバレ気味な疑問。[カーファクス氏は、何故ミリセントを含めた一家全員を洗脳しなかったのかな? その方がこの人にとっては後々楽だったんじゃないかと思うんだけど(酷) ミリセントの人格が惜しかったとかなのかとも思うけど、でもむしろこの人の性格なら、自分好みに教育できるってことで喜びそうな気もするんだけどなぁ。]

 なにはともあれ、早く十月になって欲しいですね。全くもぅ、これじゃあ蛇の生殺しだー!

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