小市民的正義感の持ち主にしてへなちょこ魔王ユーリが頑張る「まるマ」シリーズ第10巻。今回から新たな展開に突入です。
今回は新章導入編という感じですね。またまた伏線を張りまくってます。さらに毎回作中ではほとんど良いところなしなのに、何故か表紙に顔を出してるユーリの教育係ギュンター。その彼が、本編でも普通に活躍と信じられない事態が発生してました。もしかして天変地異の前触れだったりしますか?(酷)
それはさておき、ノリとしては初期に近かったかな。ややシリアスに偏っていたシマロン編よりも、素直にいろいろ笑えました。魚人姫に「タ○ノ君かいっ!」と思わずツッコミいれたことから始まり、会議とか密航の場面とか。あ、小シマロン王・サラレギーことサラの初登場ネタにも思わず笑い。アレやってた頃が、一番アニメ見てた時期なんで。好きかどうかはとにかく記憶には残ってますしねー。(←話が逸れてます)
登場人物の話。ギュンターが師弟対決などで無駄に格好良く、ある意味衝撃。が、相変わらず大真面目に笑えるネタも提供してくれます。まぁ、これは彼に限った話ではありませんが。三男坊は男前にまた磨きがかかり、長男とアニシナさんは相変わらずなノリで楽しませていただきました。でもグウェンとアニシナさんは留守番で、ヴォルフは一旦ユーリと別行動に。次巻でも出番があることを祈ります。一方、出番があるのか不安だった次男もしっかり登場。ユーリとの微妙な距離がなんだかやるせない。でもまぁ、やはりと言うべきか眞魔国を裏切った訳ではなさそうなので一安心でもありました。そして、新登場のサラは露骨に怪しい。終盤のアレにしろ、疑いもしてないユーリは根本的に人が良すぎると思います。それとも、疑いすぎな私が悪いのか。でも、普通に考えてやっぱり彼は黒いだろう……いや、さすがにあからさますぎるしミスリードの可能性もないとは言えないけど……(悩) あともう一人の新登場キャラ、橋本さん。いきなりユーリに積極的にアタックしてる彼女ですが、果たして普通の人なのか。何気に名前出してるメル友は、姓からしてあの人の一族でしょうし……うーん、話にどのぐらいまで絡んでくるのでしょうか。
ともあれ、このあとどんな展開になるのか、次巻が楽しみ……って、次巻は番外編だった。雑誌掲載分は読了済みですが、書き下ろしされるらしいユーリ兄の話は気になります。
コバルトで他に2作品出している作家氏の、1年7ヶ月ぶりの新作。……まぁ、頻繁に作品がでない理由は分からなくはないけどね……。
感想ですが、普通に面白かったです。ストーリィは、復讐に狂った青年と彼を阻止しようとする時の権力者たちの二元対立が軸にあってとても分かりやすかった。また、個人的に後半部分で首を捻ってしまった前2作に比べれば、技量が上がったのか無理矢理感もほとんど無くなって読みやすかったです。
登場人物の話。傲慢で冷酷な政元と、彼に絶対の忠誠を誓いつつ時折割り切れない気持ちを抱く司箭の主従関係が上手く描写されています。しかし、作中で「絵が描けさえすれば、どれほどの犠牲が伴なっても創り出すことを躊躇しない」と言い切った政元。のちの歴史を思うと、結局彼は絵が描けたのかなぁ、と考え込んでしまいますね。
「津原やすみ」名義作品の改稿と知ってつい購入。いや、「泰水」名義の作品はそれほど好きではないのですが、「やすみ」名義の作品は結構好きだったので。
収録作は、かつてX文庫ティーンズハートで発売されていた作品の改稿版である「冷えたピザはいかが」「ようこそ冬の館へ」と書き下ろしの「大女優の右手」の3編。
もとが少女小説(つーかライトノベル)という形式で出版されていたこともあってか、キャラクターは結構セオリーどおりと言えます。ただ、これは読むと分かると思うんですが、その誰も彼もがしっかり自己主張してくれて、魅力もちゃんと感じさせてくれます。それに加えて、軽妙な文章のなせる技でしょうか。殺人事件やらに関わりつつも、読後感は悪くないです。むしろ、キャラクター同士の掛け合いやらなにやらのおかげでコミカルな印象が残ってしまうぐらい。
ミステリとしても、よく出来ているほうだと思います。まぁ、さほど熱心なミステリ読者ではないためはっきりと断言は出来ませんが、少なくとも富士ミスよりは(←比較対象が全然参考になってません) 3作それぞれ違うタイプの謎解き(例えば「冷えたピザはいかが」は倒叙ネタのホワイダニット)が楽しめます。
まぁ、とにかく全体的に楽しく読めました。続刊は、このノリが続くなら購入しようかな、と思ってます。
独り言。ついでというのもなんだけど、「あたしのエイリアン」シリーズもどっかから再版してくれないものか。あれ、なんだかんだで最後まで読めてないんですよ……。
成田氏の新作は、池袋を舞台にしたとんでもない連中のラブストーリィ。ええもう、これは疑いの余地なくラブストーリィですよ。ただ、その「ラブ」がなんといいますか、ちょっとばかり逸脱しちゃってますけれど。
感想。読了後に、思わず「なんつー作品を書く人だ……」と呟いてしまいました。相変わらず、アイディアと構成力が光ってます。多数の人間やらなにやらが錯綜しまくる状況を、破綻させずに収束させていく手腕がもう見事としか。何を書いてもネタバレになりそうなので詳しくは書きませんけれど、とにかく面白い話でした。
登場人物の話。あっちを向いてもこっちを向いても、どこか破綻してるような連中がこれでもかというぐらい出演(つーか、アイザック&ミリア、ラッドやクレアあたりが紛れ込んでもあんまり違和感なさそうとか思ったり) お気に入りは、「首なしライダー」セルティと「闇医者」新羅ですかね。彼らの微妙な関係が素直に良い感じに思えたので。……あとの連中の「ラブ」がどこか問題ありまくりなため、相対的に彼らの純愛(?)の株が上がったという面もありますけれど。ついでに、「電撃小説的拷問」を実行しようとしたカップルに一言。大抵の作品、実行に移したら死ぬって。拷問にならないから。
追記。ふと冗談半分でアドレス入力してみたら……何をやってますかこれは(笑) 今はメンテナンス中とのことだから、24:00を過ぎたらまた覗きに行ってみよう。
異世界戦記ファンタジー第2巻。今回は侵略者のアールガウ神聖帝国側の話がメイン。
皇帝シグルドは、どことなーく某不良提督を思わせるタイプの人で。他、名前が出た幾人かの将軍やある思惑から寡兵で彼らと渡り合ったレールダムの将軍など、敵陣営にも期待できそうなのが嬉しいです。しかし、双方の戦力差が洒落にならないのがねぇ……
そういえば気になったこと。私、戦術とか戦略は正直ちんぷんかんぷんな人間ですが、それでも水の確保がほとんど出来ないところに篭城するって言うのは駄目なんじゃないかなぁ、とか思ったり。そこしかなかった、と言うなら仕方がないでしょうけれど、そういうわけでもなさそうだし……。他にもちらほら引っかかるところはあるものの、まぁ、そういう野暮なツッコミをしなければ1巻同様普通に面白かったという感想ですね。
ともあれ、侵略する側・抵抗する側ともにキャラクター紹介が終わり、次巻から本格的に話が動く模様。今後どういう展開になるか、適当に期待。個人的には、ノウラの謎に関しても、小出しでいいから忘れずにフォローが欲しいところです。
大正浪漫な正統派ミステリ、第2巻。「富士ミスなのにちゃんとしたミステリだっ!」と驚いてしまう自分はなにか間違っているような。でも、富士ミスだしなぁ……(←よっぽど信用してないらしい)
今回はいわゆる「館もの」ミステリで、ミステリ度は1巻よりやや上昇してる感じですかね。多少甘いというか上手くいきすぎな感もあるけれど、それでもミステリとして軽く読めるレベルだと思います。また、1巻同様に骸惚先生の語る探偵論は興味深く読めました。これは、作者氏の考えでもあるんでしょうか。どっちにしろ、ミステリへの愛情を感じられて好印象。
ラブに関しては……なんというか、河上君がもうほとんど入り婿になってるように見えて仕方がなかったのは私だけでしょうか(笑) 問題は、その場合のお相手はどっちになるのかでしょうけれど、やはり本命は鈍感な河上君にやきもきしながらアタックしている涼嬢でしょうねぇ(無邪気に河上君を「兄様」と慕う發子ちゃんも可愛いけれど、私としては彼女は「妹」としてしか認識できないので) また、すっかり河上君贔屓の娘たちに心中複雑な骸惚先生とにこやかにフォローする澄夫人という構図も、入り婿状態に拍車をかけてくれてます。
ともあれ、今回もなかなか楽しめました。このまま地味に続けて欲しいなぁ、と思う作品です。ところで、そのうち序&終の「私」「あの人」「コイツ」の正式な名前……つーか、大正期の面々との繋がりが明らかになるんでしょうかね? 色々想像するのも楽しいんですが、やはりきっちりかっちりした解答も知りたい気もするし……うーむ。
二人のヒロインそれぞれの視線で描かれる「エンジェル・ハウリング」シリーズ8巻目。今回は、雑誌掲載分でもあるフリウサイド。
うーん、ほぼ同じ事柄を扱った7巻(ミズーサイド)はかなり読みやすかったのですが。今回はまた読みづらくなってるというかなんというか。つーか、アマワ関係が大きく絡んでくると途端に読みにくく感じるのは私だけでしょうか(凹) あ、でも終盤のフリウによる「帝都崩壊」の場面は良かったと思います。読了後に冒頭を読み返すと、フリウと「彼」の思いがけない会話やら周囲の描写に微妙に違った印象を受けたりもしましたねー。
あと、読みにくいと感じた理由はミズーとフリウの覚悟というかスタンスというか経験の差というか……まぁ、そんな感じのこともあるかも。年齢的に仕方がないかもしれないけれど、フリウって基本的に受身で周囲の思惑やらに翻弄されてることがおおいから……。
ともあれ、ミズーとフリウ、それぞれの物語の終幕まで残すところ1巻。それぞれの最終巻発売までには、最低限それぞれの話を読み返して復習しておくことにします(溜息)
高殿円さんの新作。ビーンズ(前身であるティーンズルビーも含む)文庫以外では、初の作品発表になりますね。そういえば、舞台がパルメニア(これまでの作品で、時代は違えどほとんどメインor関連があった国)と関係が無いのも初めてかも。
さて感想。話自体は普通に面白く、楽しんで読めました。が、1巻目にしてはあれやこれやと少々詰め込みすぎのような気も。また、内容やら描写やらが微妙に噛み合っていないとでもいうか、とにかくなんとなく違和感を覚えたりもしたけれど、これは個人的な感性の問題でしょう。多分。
それから、この巻は一応人物紹介編という形にもなっているのか、一章につき3人のメインキャラそれぞれにスポットが当たるようにもなっているので、それぞれのキャラの背景や性格などもあまり無理なく把握できるようになっています。個人的には今のところ特定の誰かに入れ込むことはなく。特殊な血統に生まれついた少年セドリック、セドリックの姉で非暴力を身上とする修道女エルウィング、祖国奪還を志す少女アンブローシア、それぞれ平等にお気に入りという感じ。
ともあれ、セドリックとアンブローシアの関係がどうなっていくのか、時折謎な行動や思考を見せるエルウィングの正体、また「銃姫」を盗み出したオリヴァントの目的など、気になることが多々あるということで。次巻以降の展開にもまた期待というところです。
「真・運命のタロット」シリーズ、5年ぶりの新刊です。……あの終わり方から5年、長かったなぁ……(感無量) ところで、下巻の帯に「時間SFの金字塔」という文字が躍っていましたが。知らない人はあんまり信じられないだろうなぁ何しろティーンズハートだし、とか思ってみたり。
まぁ覚悟はしていましたが難解な内容で。特にロートワング計画のために集まった科学者達の会話には脳みそがオーバーヒートするかと(←根っから文系人間) とはいえ、その難解さすら新刊を延々と待ち望んだ身としては心地よく感じてしまうほど。カザフ編ほど後味が悪い結果にもならなかったのもほっと一安心と言う感じ(いや、冷静に考えると被害甚大ですが) しかしつくづく、どう考えてもティーンズハートでは異色な話なんですよねぇ。やっぱり、最低でもホワイトハートでしょう。つーことで、是非ホワイトハートで第一部から復刊を(←結局それか)
以下、主に登場人物に関してつらつらと思い浮かんだことを。
まずは忘れちゃいけない、ライコの記憶喪失回復と《女教皇》の復活。ライコの記憶に関しては、《魔法使い》と再会したことでいきなり戻るなんてオチじゃなかろうなとこの5年やきもきしていたのですが。さすがというか何というか、そんな単純なことにはしてくれませんでした。まさか、ここで坂崎(厳密には違うけど)を出してくるとは思わなかった……。
その後、心理的に追いつめられたライコと《女教皇》が同調した結果、カードに引き篭もっていた《女教皇》がようやく外に。同時に記憶を「返された」《女教皇》に対し、今度は《魔法使い》も逃避を許さず彼女を説得。そして――《女教皇》は、心理的にも復活を遂げます。もうこの辺は、言葉で上手く言い表せない心境でした。どんなにお馬鹿でダチョウなヒロインとはいえ、やはり小学生時代からその戦いを見守ってきた分、思い入れはあるわけで。それから、少し強くなった彼女の姿は、当然ながらいまだ私の憧れである「彼女」に少しだけ近づいたようで、それもまた嬉しく。ただ、彼女の記憶を戻す役割を担った《運命の輪》の状態を知ってしまったのはやはり辛い……彼女には、これも「分かっていた」ことだろうし、あれもその上での行動だったのでしょうが……。一方、ライコ&《女教皇》の相方である《魔法使い》は相変わらず。なんだかんだいいつつ相方にベタ惚れな態度や言葉の数々に思わず笑ってしまいました。
純情青年大河。ああもう本当にいいヤツです彼。自分は弱いと自己嫌悪をに陥りながら、それでも「愛されることより愛することを選んだんだ」と言い、前へ進もうとする意志の強さは格好良かった。何時だったか《戦車》が彼を評した「大河は悲しいほどに浪漫主義者だ」という言葉に深く納得してしまいましたね。可哀想に、恋愛方面ではちっとも報われてはいないけれど。でも、彼が現在《魔法使い》に感じている感情って、なんとなく既視感が……うーむ、勝手にあれこれ考えていた仮定が微妙に現実味を帯びてきたような。《戦車》といえば、彼と《力》の因縁も少しですがはっきりと。この分だと、やはり《隠者》の言う「サロメ」は《力》なんだろうな……。あと、普段は黙して語らぬ《戦車》の考えが語られたのも興味深かったです。
カインについては……ああうん、性格的にはこういうヤツだろうと見当はつけていましたけどね。それでも、作中ではっきり描写されるとその最低男加減が頭にくるというか。これまでは低いながらもそれなりの高度は保っていた私的好感度も大暴落してしまいました。しかし、「カイン」を名乗りながら結果的に「アベル」になってしまったのは皮肉な話。《悪魔》は、どんな気持ちで彼の姿を見つめていたんだろうなぁ……。
《吊るされた男》とその協力者キガワ。《吊るされた男》の状態は正直意外でした。何をとち狂ってあんなくそガキ……じゃなくて、礼儀というものを少しも弁えていない上、自分の実力を過信しまくってるかわいくないお子様に全権移譲なんてしたんだろう(←キガワがとにかく嫌なタイプの人) ところで、「タイトルになった巻でその精霊は活躍しない」という「運タロ」では割とよくある法則には陥らなかった《吊るされた男》ですが、最終巻でも活躍の場はあるんでしょうか。あんまり重要精霊っぽくないけれど、今のところは。
最後まで自分の興味を満たすために戦ったリンダと《星》。ライコや大河達からすればその行動は迷惑(という一言ですむかどうか)以外の何物でもないのですが。それでも、その行動は目を引くわけで……今までは特に思い入れもなかった二人ですが、自分の殻に閉じこもろうとするライコに対する態度などで株が上昇。あそこまできたら、リンダの目的は果たされて欲しかった気がしなくもなし。もはや言葉を返さぬ協力者に語りかける《星》が、少し哀しかった。
そして、《世界》から逃れるため「時の縦糸」の外側に脱出した面々が垣間見た、連携して「ある位相の《世界》」の暴走を食い止めようとする、ティターンズ・プロメテウスの枠を越えた精霊たち。これまで、「いくら激昂していたとしても、どうして《女帝》は《愚者》を見誤ってしまったんだろう?」と不思議に思っていたのですが……なるほど、こういう事情だったわけですか。納得はできるけれど、心情的には……彼女の素の言葉に何とも苦しい気持ちになってしまいます。しかし、彼女の台詞にしろ、その後の精霊たちの連携にしろ。《皇帝》滅消が一体どういう状況で行なわれたのか、一層の疑問と興味を覚えてしまいますね。さりげに、《皇帝》滅消後の《愚者》にも謎が増えてるし。ここにきて《愚者》と《死神》の因縁がクローズアップされてることも、なんだか意味ありげだよなぁ……。
そういえば、《世界》の主体に関しては「時の縦糸」の外側における全容の表現も手伝ってあまり面白くない予想をしてしまうんですが(汗) カインの発言も予想を補強してくれるのが辛いところ。いくらなんでも悲惨な気がするので、予想が外れることを祈ります。ああでも外れたらそれはそれで、「あの存在」はどうなったんだ?という疑問に行き着くよなぁ(悩)
そして、《力》の『射出』に巻き込まれ、氷の大地に投げ出されたライコと《女教皇》。その前に姿を現したのは……一瞬、「田村桂子?」と思ったけれど、それならライコも《女教皇》も即行で分かるだろうし……《女教皇》から趙の名前が出たってことは、まさかとは思うけれど、(少なくとも肉体的には)彼女だったりするのでしょうか?
予告されている次巻の題名は『《世界》。』。長かったこの物語も、遂に最終章を迎えます。未だ謎は多く、明らかにされないエピソードも多々あると宣告されているものの(何しろ、作者曰く「担当にツインピークスみたいといわれた」らしいし)。シリーズの本質的な問題について――はっきり言えば、「世界の命運に関わる重大な事象」に関しては語られることを信じて、7月を待つことにします。