須賀しのぶさんの新シリーズ第1巻目は、雑誌『Cobalt』連載分に大幅な加筆を加えてのお目見え。
今回はシリーズ開幕編ということで、メインになる3人の女の子たちの出会いと、彼女たちが一緒に旅に出るまでの話。3人の中で一番目立っているのはやはりキリ。圧倒的なまでの実力と謎めいた雰囲気のクールで格好良い美少女……かと思いきや、意外と少女趣味だったりちょっと天然だったりとかわいい面もあり。そんな彼女の目的はこの巻の最後になって明かされましたが、何故それを目論むのか、その詳しい事情は語られないまま。この後シリーズ展開していくなかで明かされることなのでしょうか。それに加えて、ロキシーやファナが今後物語中でどういう役割を果たすのか、キリが探すハル神父はどういう人物なのか、ディートン教の聖職者たちの思惑は――などなど、いろいろ先が楽しみです。
……ところで、金銭的都合により後編が掲載されていた号は立ち読みだったので記憶がやや曖昧なのですが、もしかしてドラッカー・ノワール関連はほぼ書き下ろしになってませんかこれ。
暴走お嬢様と愉快な仲間達の冒険譚、約1年ぶりの続編。前編の内容、ちょっと忘れかけてましたよ……。
さて感想……と言いたいところなのですが、話そのものはあんまり進んでないのでなんともかんとも(汗) 今回またまた噴出してきた新たな問題もあるのでどう話をまとめるのかは楽しみなところではあり、これまでイライラを溜め込んだぶん下巻での大爆発(キャサリンだけじゃなく、ダムーたちも含む)に期待したいところ。そういえば、上巻の感想で「お嬢様の行動などが微妙に引っかかりはじめてきた」とか書いてましたが。今回の話を読んで、某暁での金銀黒を思えば、これはまだ全然許せるレベルだなぁと少し思い直してみたり。
とにもかくにも下巻待ちという状態なわけですが、肝心の後編はあとがきによれば来年春。…………えーと、今年の春のことですよね? そもそもこの中巻、1月刊行予定(発売は年末)だったからうっかりそのまま修正されずに発売されただけですよね?
沙漠の小国を舞台にした王道ファンタジー「キターブ・アルサール」外伝2冊目。今回は本編よりも過去を舞台にした、「風の民」アル・シャマル族の若者たちの物語。
これまでの話でも思わせぶりな描写が多かった、カウスの抱える事情が明らかに。その事情のおかげで周囲からは奇行と見られる行動をとってしまったり他人と距離を置いていたりするカウス。彼が本編の段階でもこちらに踏みとどまれているのは、例えボーっとしているというかヘタレっぽいようでも(←酷)彼の意志が強い、というのもあるでしょうけれど、やはりジェナーやイリヤなど周囲に恵まれてることも手伝っているのでしょうねー。
それから、もう一人話の中心だったジェナー。最初は、次代候補として自分より優秀なカウスに劣等感や嫉妬に苛まれていた彼が、周囲の助言やらを受けて失敗しながらもそれを克服して少しずつ成長していく姿に、主人公らしい主人公だなぁと思いました。カウスがもうある意味達観しまくってるおかげで変わりようがなかったものですから、余計に。
ともあれ、今回も普通に面白く読みました。今後も外伝が発売されるのかは分かりませんが、また別の話が読めるならそれはそれで楽しみです。
これまで歴史風味の恋物語を発表されてきた藍田さんの新作は、双子の兄弟の愛憎モノでした。ちなみに前2作と世界は共通しているものの、これまでの話とは全く関係がない独立した話です。
感想。恋愛方面をばっさり切ってるのが少し残念ではありましたが、それを除けばまぁベタだけど面白かったかなーというところ。展開はものすごく強引かつ甘すぎと思いましたが。昔の荻野目氏並に容赦なくやってくれとは流石に言わないけど、もう少しハードなほうが好みなので、その点が残念。あと、題名にもなってる割に「迷宮」はあんまり効果的に作用してないような気がしたり。
ところで、弟君にはひとっかけらも同情する気になれなかった私は冷たいでしょうか。むしろ微妙に被害者面してるあたり、殴り飛ばしてやりたくなったんだけどなぁ。かといって、兄王には同情なり何なりしたかと聞かれれば否だし……冷静に考えると、入れ込んだキャラが一人もいないな……。
ともあれ、次回作にも期待。今度はまた恋愛要素が入った作品になったら嬉しいなぁ。
微量のSF要素を含んだ正統派異世界ファンタジー6巻目。制圧されたフォルナム神殿を巡るフェリオたちの動きと、西の大国ラトロアの不気味な影とを中心に話は進みます。
いやー、文句なく面白かったです。個人的に4巻でややテンションが下がってしまっていたのですが、完全に盛り返した感じ。戦闘場面もあるものの、やってることは基本的に外交上の駆け引きだったり情報分析&作戦会議だったりと地味なのですが、それがやたらと面白く読めました。多分、個々の場面で各陣営の思惑や個人の想いが丁寧に描かれているのが好印象につながっているのでしょうねー。
一方で、リセリナたちの世界とフェリオたちの世界をつなぐ謎が一つ明らかになったりもしてます。まだ教授の推論の段階ですが、状況証拠を見るとこの件はほぼ決まりでしょうか。なんにしろ、今後どの程度までこの世界の謎に踏み込まれるのかもまた楽しみですね。
登場人物では、前巻の段階で十分高かったパンプキンの株がさらに上昇。もう、非常に格好良かったですよ。これで素顔が渋めの小父様だったりしたら完全に惚れますね私(←趣味に走りまくった発言をしないように)
あと、天然女殺しなフェリオに対するリセリナとウルクの感情ににんまりとしてしまいました。微妙な三角関係が形成されつつあるようですが、彼らの関係もこの先どうなることやら。
さて。今回終盤に起こった事件がアルセイフと諸勢力の関係にどういう影響を与えるのか。リセリナたちはどうなるのかなど、非常に先が気になるところです。
『平井骸惚此中ニ有リ』の作者さん、初の単発読みきり。個人的な印象で乱暴に要約してしまえば、デビルサマナーの主人公状態でハサミ男な話でした。
まず、語り手であり主人公である「俺」。この人物は魅力的、というのとは少し違いますが、その精神の歪さが読んでて興味深いという印象。そんな「俺」と一緒に行動する「ナヴィ」は、隋所随所で結構常識人かもしれないなー(いや、人じゃないけどさ)とか思いつつ、それでもなんとなく疑いの目で見ていたのはアレですね、過去の経験からですね。デビルサマナーであの状態になった真相が明らかになったときの渡し守の言い草に、「そんなのありかというかそれ以前にそんなのでいいのかあんたの仕事はっ!?」と叫んだものなぁ結局元に戻してくれないばかりか戻せと言ってみれば連戦連戦で大概死にかけてるのにまた無間地獄に送ってくれるしふふふふふ。……あー、まぁ個人的かつ嫌な思い出はさておき、この「俺」と「ナヴィ」のコンビはなんだかんだでちょっと気に入りました。おかげでオチもわりと好き。
さて、「俺」が追うことになる殺人事件。ヒントはあったものの、種明かしされるまで考えもしない真相でした。多少(というかかなり)力技ではありましたが、まぁそういうのもありかと思えばなかなか面白く読めました。ややっこしかったけど。それにしても、全ての発端になった人物の異常さの前には、流石の「俺」も形無しでしたねぇ(苦笑)
なんとも微妙な幕引きですが、この先彼らはどうなるのか。あの人もまた戻ってきているのか。機会があれば見てみたいような見たくないような……。
第4回富士見ヤングミステリー大賞最終選考作。応募原稿を改稿しての発売のようです。
感想。何故これが入選しなかったんだ?と疑問に思うぐらい、面白かったです。序盤はわりとコメディタッチで話が進むのですが、事件の全体像が見え出す中盤以降はシリアス展開に舵が切られ、少し物悲しいラストにつながっていくことに。この間の、ホンダと重要人物の娼婦とのささやかな交流が、ベタといえばそれまでだけどやはり良い演出だと思いました。つーか、個人的にああいう演出は反則だと思うのです……(涙)
登場人物の話。主人公のホンダは不運の連続ですっかりやさぐれてますが(笑)、地の文や行動から分かる案外熱血漢な持ち前の性格が好印象。ホンダの上司兼相棒のウォルターと、ある理由で彼らと行動を共にしたりする爆弾娘ヴィスコは、悪くはないのだけれど今ひとつ印象が薄くてもったいない。特にウォルターのとある過去の経験はあれで流して終わりですかと……彼らに関しては、もう少しホンダと絡んでくれれば良かったような気がします。ターナーは普通に下衆と言うか腐敗or駄目警官の見本というか憎まれ役という感じで、ここまで行くといっそすがすがしく……はないな。やっぱり憎たらしいヤツでした(もしとんでもない事態になってたらどうするつもりだったんだコイツは。……別にどうもしなさそうか) その他、口の軽いリチャードや韓国からの研修生ユン、口も態度も悪いながらも仕事はしっかりやってる(と思われる)アーノルド課長など市局の面々、そしてヴィスコ以外のメイン女性二人もなかなか良い味を出していて、話の面白さに一役買っていたように思います。
この作品はかなり気に入ってしまったので、できれば続編も読みたいなーと思いますね。私としてはとりあえず、シルビア(傍迷惑な表現方法ではあるけど、彼女は結構本気でホンダに惚れてると思うのですがどうでしょう)との関係がどうなるのかが気になります(笑)
こちらも第4回富士見ヤングミステリー大賞最終選考作。応募原稿を改稿・改題しての発売。
「……武侠分が全然足りません……」などという一武侠ファン(ちなみに金庸より古龍びいき)の寂しい呟きは横に置いておいて、感想。
あらすじ見た時点ではもっとトンデモなミステリかと思いきや、案外真っ当なトリックで逆に吃驚してしまったり。そんなに凝ったトリックではなかったですが、謎解きなども普通に読めましたし。ただ、そつが無さすぎて強烈な印象は残らない、という面があるかもしれません。あと文章は好みが分かれるかも(私は、少し読みにくいなぁと思いました)
武侠小説としては、設定で細々と引っかかる部分があったり、アクション的にもさほど見るべきところがないというかお約束的に軽功と点穴ぐらいしか使ってない時点で特に語ることはなしという印象。それにしても、せっかく抗争してる組織が北と南にはっきり分かれているなら南拳北腿をさり気に演出してそれぞれを特徴づけるとか魅せ方はいろいろあると思うんだけど……(ぶつぶつ)
まぁともあれ、続編もありそうな感じだし、今後の成長にはそれなりに期待、という感じでしょうか。金庸ファンでも楽しませる作品を書くにはまだまだ道は険しそうですが、頑張って欲しいとは思います。とりあえず、元祖東方不敗並みに素敵なキャラが登場したら(個人的には)とっても楽しいと思うのですけど、流石に無理か。
今度は祥伝社から発売のお涼シリーズ。……一体どういう経緯で出版社をまたがってシリーズ展開されているのか、不思議。
で、内容ですが。まぁいつものとおり(←説明になってないってば)なので、これまでの話が楽しめた人ならそれなりに楽しめるかと。あと個人的には、敵の使役する一部の生物たちの大群をうっかり想像しかけて卒倒しかけました。ソラトブウエニイタイノハトッテモイヤナノデスアアカコノトラウマガ(震)
……えーと、正気に戻って話題転換。お涼と泉田君の仲はちっとも進展しませんな。つーか、なんか一歩進んで二歩下がるを地で行ってるような印象があるのですが私の錯覚でしょうか(苦笑) ……って、あれ。もう他に感想書くことないや。
某雑誌の情報によれば今年は『アルスラーン』の新刊が秋に予定されているようですが……まぁ、年末辺りに発売されれば上出来でしょうね(既に達観)
記憶をなくした少女と、偶然彼女と一緒に行動することになった少年たちの物語「クロスカディア」シリーズ最終巻。
これまでも散々地味だ地味だと言ってきましたが、最終巻も普通に面白かったもののやっぱり地味、という印象でした(笑) つーか、今回は主人公(?)のシンが戦闘してないし。まぁ、彼は登場人物中で戦闘能力が(多分)一番低いからそうなるのも仕方がないといえば仕方がないのかもしれませんが、ある意味衝撃でしたよ。もっともその分、いろいろ喋ってはくれましたが。あと、この世界の謎も大部分をきちん片付けてくれたのは好印象でした(結局今回は、L様と関係ない世界だったのね)
最後はあっさりと解決しすぎな気がしなくもないけれど、大団円と言っていいエンディングで良かったねーという感じでした。
何はともあれ、次回作もまた楽しみにしています。