不良神父とその『聖なる下僕』となった吸血鬼の少女の物語、スカーレット・クロス6巻目。伝説の『聖櫃』を開けるための『鍵』として目をつけられたギブとツキシロ。どちらがより『鍵』に相応しいかの選別も兼ねて、イブリスの契約者が二人を襲う――と、そんな展開。
登場人物が少しごちゃついていた感じで、ちょっと混乱しそうになりましたが、話そのものは順当な展開なのでわりと安心して読めました。そんな中、これまで「頑張ってるけど役立たず」だったツキシロも前回の事件の影響で強くなって頑張ってます。……強くなって頑張ってますが、しっかり役に立ってるかは微妙かも……。まぁ、覚醒したばかりの力をいきなり使いこなせるわけはないから、これぐらいが妥当なところかな。今後頑張って力を使いこなしてください(苦笑) そして最後のアレはえぇと……まぁ頑張れギブ、と肩を叩いてあげたくなったですね(意地の悪い笑顔で)
さて、この話は一体どんな結末を迎えるのか。ギブとツキシロはどうなるのか。そして、お父さんは最終的にどう出るのか。続きを楽しみに待ちたいと思います。
大人の事情かソフトカバーで発売の「古典部」シリーズ第3弾。これにあわせて前2作も(私はまだ発見できてませんが)新装版で発売されているそうなので、興味のある方はこの機会にシリーズまとめて購入を検討されてはいかがでしょう(ささやかに宣伝) あ、それから既に購入された方は、作者サイトで誤植の正誤表がUPされているので、一度足をお運びになることをオススメします。話にも絡んでいる部分なので。
さてこの『クドリャフカ』の内容は、遂に神山高校の文化祭が開幕。校内が盛り上がる中、古典部は手違いで大量に刷り上った文集『氷菓』を完売するため奔走する。一方、各部活からちょっとした物を盗んでいく怪盗が出現して――というもの。ミステリ色はやや薄めでしたが、その分楽しくもほろ苦い青春モノとして魅力的な作品に仕上がっていました。
今回は前2作と違って奉太郎以外の3名の視点からも語られるため、これまでは推測するしかなかった彼らの内面がより身近に感じられたのが良かったですね。個人的には、福ちゃんの奉太郎に対する気持ちが興味深かったかな。摩耶花の漫研での複雑な立場は殺伐としてて読んでて少し辛かったですが、女が数集まるとどうしてもこういうことってあるよねぇ、と思わずうなずいてしまったりも。千反田さんは割と想像どおりだったですね(笑) あと、奉太郎はこれまでで一番省エネというか、安楽椅子探偵できてましたな(店番だものね……) 他、前2作で登場した人たちも何名か再登場。入須さん直伝『人への頼み方』は、そういえばこの人『愚者』ではそういう頼み方してたかも……とぼんやり思い出しました。
あと、文化祭特有の空気が非常に楽しそうで、読んでて思わずうきうき。お料理研究会主催のワイルドファイアとか楽しそうでいいなぁ……私の通ってた高校、前の年に食中毒が発生したとかで模擬店とか食品の類が一切禁止されてたから余計に羨ましく感じる……。
なんにしろ、これで神山高校文化祭は名実ともに終了。これから先も古典部の面々の話が読めることを祈りつつ、次回作『犬はどこだ』を楽しみに待ちたいと思います。……それにしても、[描かれることのなかった『クドリャフカの順番』は、一体どんな内容だったのか]、気になります(気持ち千反田さん風に)。
微量のSF要素を含んだ正統派異世界ファンタジー7巻目。『御柱』から突如出現した謎の兵――ラトロアの『屍の兵』に苦戦を強いられるフェリオ。イリスに捕まり追い詰められたリセリナ。勿論それ以外の人々の動きも含め、今回はそれぞれの混乱と喧騒の一夜が語られています。
とりあえず読了後最初に抱いた感想を一言で表すと。「ウ、ウルクーっ!?」というところでしょうか。うわあああ、吉兆だとばかり思ってたのにまさかまさかあんなことになるなんて! あーいやうんでもきっと大丈夫ですよね、ほら渡瀬さん幼馴染作家だしっ!(←理屈になってません)
えーと、それだけで話が終わるのもあれなので。話の本筋に関しては、文句なく面白かったです。異常な事態への対処のみならず、ここに来て裏設定も本格的に絡んできたりと、まさに目が離せない展開。イリス率いる『来訪者』グループにも変化があったりと、今後の展開が某女神伝と並んで気になるところ。あと、状況が状況なので戦闘場面の分量が多くなっていますが、その中でも個々の駆け引きやら心情やらがしっかり書かれているのはやはり良いですね。
登場人物では、やはりパンプキンが格好良すぎ。何故あんなに素敵に美味しいキャラなのですか彼は。さすがに裏表紙は一瞬吹きましたけど。あとはカシナートさん味方に回ると頼りになるなぁとか、エンジュ頑張れーとか、ライナスティ存外に強かったのねとか、ウィスタル卿が渋かっこいいとか、リカルドはどこかに利用された挙句に犬死にそうだよなぁとか、その他いろいろ。
とにかく、今回の件で各勢力にそれぞれ動きがあったわけで。これから本格的に対ラトロアという構図になるのかな。そろそろシリーズの終着点も見えてきたような気もしますが、まずは次巻が待ち遠しいところ。……なんとかウルクに救いの手をぷりーずです……。
明治の世に、謎の秘術で甦った新撰組幹部――近藤勇、土方歳三、沖田総司、原田左之助と、彼らを追う永倉新八の闘いを描いた「鬼神新選」、約1年ぶりに発売の3巻目。
(無言で、一緒に買った『空ノ鐘』と厚さを比べてみる。なんとなく溜息) ……えーと、気を取り直して。追い詰められた永倉の前に突如姿を現し、結果的に危機を救った斎藤一。彼の状態に関しては、まぁ普通に予想通りといったところでしたねー。斎藤は最終的にどう出るかは横に置いておいて、とりあえず情報を得るためにしばらく永倉にくっついていくのかな。一方、前巻で永倉と袂を分かった篝炎は、下国の命で岩倉の屋敷に潜入。そこで魔人を操るシスター・アンジュと薩摩藩士・中村が思わぬ取引を持ちかけている現場に遭遇、さらには思わぬ強敵に追い詰められ、とこちらも少々意外な展開に。ラストでは合流した二組ですが、このまま共闘ということになるのでしょうか。でも、それにしたって戦力的にはまだまだ差があり(過ぎ)ますからねー。ここからどうやって魔人として甦った近藤たちに対抗していくのか、気になるところ。
収録されている番外編は池田屋事件に関する話。こちらはうーん、まぁ、普通の新撰組モノという感じだったかな。
次ぐらいで東京篇にケリがつくのかなーと思いつつ、続きを待つことにします。……また1年後ぐらいかな……でも、この厚さならもう少しペース早く上げて欲しいよね……(本音)
西欧の小国に留学した少年と留学先の学園に住む奇妙な少女の交流と彼らの遭遇する事件を描いた「GOSICK」シリーズ、今回は雑誌掲載分5話と書き下ろし1話を収録した短編集。時間軸的には、二人の出会いから本編1巻に至るまでの物語になっています。
ミステリとしては短編ということも手伝ってか、いつも以上にお手軽なものでしたが、ヴィクトリカと一弥とアブリル(+セシル先生)がかわいかったから何でも良いかと思ったり思わなかったり(こら) しかし、ヴィクトリカと一弥は最初はもう少し長期間よそよそしかったりするんだろうなぁと思っていたので、割と早い段階で本編並みの親密度になるのが意外といえば意外でした。特にヴィクトリカはもっと人見知りしそうなんだけどなぁ……と首をひねっていたら、その辺の裏事情(?)はセシル先生視点の書き下ろしで一部語られてました。でも、何が意識に引っかかったのかはやはり謎だ……まぁ、LOVE的にそういうことだと勝手に脳内補完しておきますが。
ところで実質初登場だったおとーさまは、「娘に与えるもの」として提示したものだけを見れば単なる親馬鹿に思えなくもない。……フリルも必需品なんですか……
通算6冊目の「ぶたぶた」シリーズ。今回は題名から分かるように食事に絡んだ短編4本が収録されています。
4本の短編はそれぞれ甘いばかりの話ではないけれど、ちょっと笑って涙して、読後にはほんわかした気持ちになれる優しい作品ばかり。それぞれの味があるので甲乙つけがたいですが、強いて言えば「十三年目の再会」が一番気に入ったかな。まぁ、内容的にはいつものぶたぶたさんで、安心して読めるし面白かったです。ただ、なんとなくこれまでより題材が狙ってるような?印象も持ってしまったり。まぁ、このあたりは個人の好みの問題だし気にするほどのことでもないでしょうけど。
あと、巻末の西澤保彦氏による解説はなかなか興味深いというか物凄く納得するものがありました。
あちこちで発表されていた短編と書下ろしを収録した、「星界」シリーズ初の短編集。
……えーと、真面目系とお遊び系の落差の激しさについていくのが大変でした。まぁ、ネタだと割り切ってしまえばお遊び系も面白いような気がしなくもないですが……でもどうせなら、もっと真面目系の、本編がらみの話が読みたかったなぁ、というのが正直なところかも(……つーか、いろんな意味で遊びすぎというか悪ノリしすぎだよなこれ……) あ、真面目系の話は普通に面白かったです。個人的には、「創世」が気に入ったかな。
次は本編が(できるだけ早く)読めることを期待してます。
吸血鬼と人間の共存地帯『特区』を舞台にした吸血鬼と人間たちの物語「BBB」シリーズ、今回は雑誌連載分を収録した短編集。
うん、まぁ総合的には富士見お得意の短編集だな、という感じ。ストーリィ重視で笑いもあるけどシリアス展開な長編に比べるとキャラ重視の構成になっていて、お約束どおり文明の利器に弱いジローと年齢を鑑みてもボケすぎなコタロウ、そして二人のおかげで大変な目に遭うミミコの関係が面白かったです。でも、長編より先に短編がスタートしていたためか、ところどころで微妙な違和感を覚えたりも。この辺は、長編開始後の短編では解消されてるのかな?
さて、次巻は長編とのことで。あの3巻からどういう風に続くのか、今から楽しみです。
読後最初に頭に浮かんだ感想は、「こういうのもありだと思うけど、後味悪い」でした。米澤氏の作品でこういうのが出てくると思っていなかったので、余計にそう思ったのかもしれません。また、これまでの作品が日常系ミステリだったのに対し、主人公の年齢・職業も手伝ってか普通に探偵モノ(ハードボイルド度は高くない)になってます。
主人公をはじめとするメイン登場人物は、程度の差はあれそれぞれ味があって良い感じ。とりあえず、そもそもあまりやる気がなく引き受けたのに、調査が進むにつれずんずん深みにはまっていく紺屋に合掌してみたり。読了後にタイトルや帯を改めて見ると、もはや彼の心からの嘆きにしか思えなくなってるのがなんとも。そして、某氏に関しては因果応報と言うのもむかつくというか、同情の余地は一片もなしと即断。いや正直な話すると、ああいう系の犯罪者には個人的に生存権すら認めたくないのですよね(←そこまで言うか)
まぁ、思っていた作風ではなかったけれど、登場人物同士の掛け合いやラスト付近のどんでん返しなど、面白かったことは面白かったです。既にシリーズ化が決定しているのかは分かりませんが、別の事件の話が読めるなら読みたいな、と思います。
大戦で荒廃した世界を舞台に、強大な宗教国家転覆を目論む少女と様々な立場の人々の思惑を描いたシリーズ第3巻。
副題見た瞬間からなんとなく嫌な予感はしてたし、表紙イラストを見るに至ってさらに不安は倍増しておりましたが……それでもあえて叫ぼう。こんな展開ありなのかーっ! なんかすごく納得できない。私の読解力が足りないせいもあるかと思いますが、それでもこれじゃ、彼女は何のためにこの作品に登場したのか分からないですよ。正直、悲しいとか言う以前に呆気に取られてしまったし。ああもう、須賀さんの作品読んでこんな気分になるのは初めてだ……(凹)
……嘆いてばかりいても仕方がないので、ちょっと切り替えて。今回キリたちは、とある事情から急遽ディートニアに潜入することに。なので、ディートニアの体制について新しい情報が入ってきたり六大主教のうち二人が登場したりして、その点は興味深かったです。サンティスさんはなかなか楽しそうな人なので、今後の暴れっぷりに期待。
まぁとりあえず、個人的にテンションががくっと落ちてしまったものの、あとがきで曰く「序章がやっと終わったというか、これで舞台は整ったという感じ」らしいですし、「ディートニアも出ばりまくり」というこの先の展開は気になるので、4巻以降で不満を吹き飛ばしてくれることを祈りつつ。
唐の公主として吐蕃(現・チベット)に嫁いだ少女・翠蘭と吐蕃王リジムの物語、第5巻。
…………偶然以外の何物でもないと分かってはいるけれど、何故こうも腹の立つことが核になってる話を連続して読んでるんだろう私は(溜息) まぁ、勝手にイライラしても仕方がないので、気分を切り替えて感想行きましょう。
これまで伝聞だけでは登場していたソンツェン・ガムポ王が遂に登場。期待していた翠蘭との対面は案外あっさり片付いてしまってなんとなく拍子抜けしてしまったり。うーん、もう少し何かあるかなーと思っていたのですけど。あと、多分登場するだろうと思っていたティツン妃は、ラサにお出かけ中のため登場せず。ちょっと残念。
で、翠蘭とリジムはいつものように騒動に巻き込まれるわけですが、今回は翠蘭がかなり酷い目に合わされてちょっと気の毒でした。ついでに言うと、今回改めて思ったのですが名前持ちの脇キャラは、割と容赦なく使い捨てられてますよね、このシリーズ。……しかし、今回の首謀者はいつにも増してアレだよなぁ……って、あまり深く考えるとまた腹が立ってくるからこの辺でやめておこう。
何はともあれとりあえず一段落ついたと言えますが、この先どういう風に展開することやら。時期的にそろそろ……近づいてきてるしね……。