第3回ビーンズ大賞優秀賞受賞作の続編。今回は、なりゆきもあって共に旅することになった薬師のカナギ、元暗殺者で魔導師のミリアン、そして謎の詩人ソラの3人。「不死を得た魔導師の城」を訪ねた彼らはまたしても騒動に巻き込まれる、という感じの展開。
内容そのものは前巻と同じく、可もなく不可もなく普通に面白かったという印象ですね。ただ、詩人が何者なのかが明らかにされたりカナギに因縁の相手が出来たり、他にも微妙に動きがあったり設定が明らかになったりしたおかげで、今後それなりに盛り上がってきそうかなーとちょっと期待。
第5回富士見ヤングミステリー大賞、佳作受賞作。あらすじ読んで面白そうだった&もともと時代小説好きなので、購入してみました。
真面目に時代小説として読むと肩透かしというか物足りなさがありますが、それはそれとして主人公の楓をはじめ各キャラクターが生き生きと動いているのが好印象。話も最初から最後までテンポよく読めたし、正直なところあまり期待してなかったのですが(←失礼)なかなか面白かったです。
登場人物では、意地っ張り同士の楓と弥比古の関係が微笑ましくて良い感じでした。あと、二人の幼馴染で大店の若旦那・嘉一と彼に付き従う少女・羽瑠、それから楓の友人の秋葉と、ひょんなことから知り合うことになる陰陽師の速水宗一郎もそれぞれの味があって皆お気に入り。それだけに、皆が幸せになって欲しかったなぁ……と、終幕で少し切なく思ってしまいました。
この1話で完結はしてますが、人気次第ではシリーズ展開もありそう。どうなるにしろ、次回作が楽しみです。
英仏百年戦争をモデルに、女暗殺者メムと、メムによって「聖女」として祭り上げられた少女レステ、そしてメムに拾われた傭兵のラウレイオンの3人を中心に繰り広げられる架空歴史物語。気が向いたので久しぶりに再読してみた、「とにかく暗い&救いがほとんどない」ことで有名(?)な荻野目悠樹氏の初期作品、その一。個人的にはデビュー作の『シインの毒』と並んで好きな作品だったりします。
ハッピーエンドに至る過程は想像できるのにどうしてもそこに辿りつかないというか、登場人物たちがことごとくフラグをぶち壊していってるというか、そんな印象を受けてしまう展開がいっそ清々しくすらあります。特にメムなんか一応主役なのに、かなり痛めつけられる上にとことん報われないし。しかも、この巻の最後がまた強烈なんですよねぇ……。ああいう状況になったら普通なら和解まではいかなくても妥協点を見出すような展開になるだろうと思うのですが、そんな予想をあっさり壊してくるのが容赦がないよなーと、今でも思います。
「暗殺者」シリーズ第2巻。アイレントの猛攻をからくも退けた「聖女軍」だが、メムは深手を負ってほとんど動けなくなってしまい、記憶を取り戻したレステはメムを拒絶する。破綻した関係を繕う間もなく、アイレントとの決戦が迫り――、とそんな展開。
ぼろぼろになりながらも贖罪のためレステに尽くすメムが痛々しくて、彼女を拒絶するレステのことが事情を知っていても憎たらしくなってきます。それでも死地を乗り越え、メムとレステが少し歩み寄って、「良かった、これで何とかハッピーエンドになりそうだ」と胸を撫で下ろしたのもつかの間。終盤は「なんでまたそういう方向に進むんですか……」とがっくり肩を落としたくなる展開に。まぁ確かに、ああいう風になる可能性もなくはないとはいえ、めでたしめでたしで終わっておこうよーと愚痴の一つも言いたくなるというか。レステもラウレイオンも、そしてメムも、みんなあまりに報われなさ過ぎで、最初で最後のメムの慟哭が余計にやるせなく感じられます。……つーか、これに比べたら『シインの毒』も「ジェネウ」も普通にハッピーエンドだと思うのはきっと私だけではないはずだ。
ご祝儀代わりに購入してみた、新規参入レーベルの作品。「フルメタル・パニック!」の賀東さんも関わってらっしゃるようです。
感想。思っていたよりも渋めな作風で、なかなか面白かったです。最初は互いに相手を嫌っていたケイとティラナが、捜査を進める中で相手を理解して相棒としての関係が構築されていく過程など、王道ながら良い感じ。加えて、脇役もそれぞれの味があって○でした。
普通にシリーズ化できそうな終幕ですが、続編があるなら次はどんな内容になるのか、ちょっと楽しみ。
あ、そういえば。浅木原さんの感想を先に拝見していて、あとがきがどんなのか期待していたのですが、別に笑いネタに走ってるわけではなかったのですね。そういうのを想像してたのでちょっと拍子抜けしてしまいましたが、凝ってることは確か。『アラビアの夜の種族』(古川日出男/角川書店)のあとがきが傾向としてはこれに近いものがあったような、とふと思い出したり。
先月感想を書いていた「邪眼」シリーズや「黄昏狼」シリーズ(オーストラリアをモデルにしたと思しき大陸での賞金稼ぎたちの物語)、その他単発作品をいくつかスーパーファンタジー文庫で発表されていた作家さん。復帰作と言うべきなのか、ともあれかなり久しぶりの新刊ということで、かなり楽しみにして購入してみました。
で、一読して率直に思ったことは、「……小説じゃないよなこれ」の一言に尽きるかと。現実の陰陽道に則って作り上げた設定を用いた「小説」を読みたかったのに、そのレクチャーに終始されても困ってしまうというか。それでも進め方によってはまだ面白く読めたかもしれないけれど、事件も何も起こらないし全体的に起伏に乏しいし。うーん、澤田ふじ子さんの「土御門家・陰陽事件簿」の現代版みたいなのを期待していたのですけどねぇ……。
次回作があるなら、今度はちゃんとストーリィ性のある作品が読めますように。……つーか、「黄昏狼」と「邪眼」復刊してください。これで初見の人に藤原作品がイマイチだと認識されるのは悲しすぎ……。
いよいよクライマックス突入の「銃姫」シリーズ第6巻。
4巻のラストから、ものすごくハードな展開になることを想像していたのですが、案外そうでもなく。なんか微妙に肩透かしを喰らった気分でした。少し気になったのはエルウィング。妙に悟ったような物わかりが良さそうな発言は、ああ言えば逆に見捨てられないと計算しての言動だったりするのかな? ともあれ、セドリックとアンが別行動となったのが、この先はたして吉と出るか凶と出るか(今のところ凶に傾いてる印象ですが)
で、アンと別れた二人がエルの治療のために向かった灰海で出会った謎の男、ミト。読者には最初からバレバレだったわけですが、そうと知らずに交流を深め最後にようやくその正体に気づいたセドリックが、次の巻でどういう行動に出るのか、楽しみなところ。
独り言。好みの問題ですが、どうもコメディ部分が浮いてるような気がする。つーか、ここまで来たらシリアス展開で最後まで突っ走って欲しいよなぁ。