■ 2006.3月読書記録

 3/3 『スカーレット・クロス 背信の月露』[瑞山いつき/角川ビーンズ文庫] →【bk1

 不良神父とその『聖なる下僕』となった吸血鬼の少女の物語、スカーレット・クロス8巻目。伝説の『聖櫃』を巡る戦いとなっている第2部もいよいよ大詰めになってます。

 今回の内容は簡単にまとめると、「再びルナシィとなった影響でより魔物に近くなってしまったツキシロ。それにともなって生じた渇きに耐えるのも限界に達しつつあった彼女は、苦悩の末にギブの元を離れる決意をして……」という、王道ながらも盛り上がりそうなあらすじなのですが、うーん、なんだか微妙に地味な印象。クライマックスのわりに、それほど盛り上がってないというかこれまでと大して変わらないというか。ツキシロとギブの主役二人があれこれ悩みまくってる一方で、話そのものは進んでるけど急展開というほどでもないし。「魔物の村」ゴモラも駆け足だったためか単なるイベント消化中のような感じを受けてしまったし……ちょっといろいろ勿体無かったなぁと思いました。
 あと、すごく久しぶりに存在を思い出した(←問題発言)ウォール村での、ツキシロとレアのやりとりにちょっと泣けました。つーか、最後のレアとエルクの会話がものすごくあからさまに死亡フラグっぽいんですけど(汗) ここまであからさまなら、逆に大丈夫かなぁ……。

 あとがきによれば、本編はあと一冊で完結予定とのこと(それとは別に短編集も出る予定らしいですが) あと1冊でまとまるのかちょっと疑問ではありますが、それも含めてどういう結末になるのか楽しみ。

 3/4 『生まれいずる者よ -金の髪のフェンリル-』[榎田尤利/講談社X文庫ホワイトハート] →【bk1

 カタストロフィー後に形成された歪な支配体系と対峙する二人の若者とその仲間たちの物語、フェンリルサイドを描いた「金の髪のフェンリル」第2巻。

 この巻は、表紙を飾ってるだけのことはあって、悪役のユージンとセシルにこれまでになくスポットが当たっている巻でした。とりあえず、ユージンに人間らしい(?)側面があったことが意外でしたね(酷) 今回明かされたあの人のことといい、ユージンの行動は彼の属する世界と常識からすればもっともなのかも、とちょっとだけ思ってみたり(やってることが外道なことに変わりないですけどね) セシルに関しては単にユージンに狂信的な忠誠を捧げているだけだと思っていたので、今回の話で重要な役割を担った「読み人」ソナムの指摘に意表を突かれた感じ。それにしても、今回の行動はその後もユージンに露見してないのでしょうか。彼はそんなに甘くないと思うんですが、欲目でしょうか。
 その他の感想としては、ソナムの決断が重かったなぁ、と。そういう覚悟というか、自分で引き受けた役目なら納得してできるでしょうが、彼女の場合はそうじゃないわけで。……「流血女神伝」のカリエもそうでしたが、よくそういう決断が出来るものだと思ってしまいます。理性で分かってても、やっぱり、ねぇ?
 あと、ユージンとある人物の短編も収録されているのですが。こちらもなんとも言いようのない、やるせなさの残る話でした。そもそもああいうことになった原因は明らかにユージンにあるとはいえ、それでもああいう結末に至ってしまったことが今の彼の姿により近づけてしまったのだろうと思うと……どうにもなりそうもないこととはいえ、どうにかなって欲しかったと思ってしまいますね。

 さて、次の巻はフェンリルとサラの再会後とのこと。「金の狼」と「運命の少女」が、この先シティとDエリアに分かたれた世界にどのような変化をもたらすことになるのか。今回フェンリルが受け取った遺言が意味するものは何か。あと、少し地味なところではタシは今後も物語中で何か役割があるのか。この先の展開がいろいろと気になるところです。

 余談。作者さんのブログで「この物語もそろそろ終わりに近づいてきています」と書かれていてちょっと吃驚。今はまだ序盤で、フェンリルとサラの合流後に本格的に話が始まるんだと思い込んでましたよ私……。

 3/8 『パラケルススの娘 3 仮面舞踏会の夜』[五代ゆう/MF文庫J] →【bk1

 只今本が行方不明につき、更新作業凍結中。

 3/11 『空ノ鐘の響く惑星(ほし)で 10』[渡瀬草一郎/電撃文庫] →【bk1

 微量のSF要素を含んだ正統派異世界ファンタジー10巻目。今回はウルクの故郷・ジラーハが舞台。

 前巻でようやく三角関係にスポットが当たったためか、今回もそっち方面の話が頻繁に。二人とも良い娘なのでドロドロ展開にはなりませんが、でもなんというか、それぞれの弱点というか、マイナス面が浮かび上がってきた感じではありました。リセリナに関しては、何巻だったかパンプキンが彼女を評した台詞が如何に的確だったか、今回の話を読んでより深く納得し、一方のウルクに関しても姉である神姫ノエルの指摘で最近ちょっと引っかかってた部分に納得できたというか。まぁ、どうなるにしろ3人が納得できる結末になってほしいところ。
 その他の登場人物の話。ノエルはいろんな意味で印象的な人でした。もっとはかなげ系かと思ったらなかなかどうして、あのカシナートさんが手玉に取られてるし。そしてお父様はご愁傷様ですとしか(笑) イリスはイリスでエンジュと仲良くやってる様子で、それはまぁ別に意外ではなかったのですが、カトルに関しては本気で意外でした。いや、別にそういう展開に行くとは限らないわけですけど。あと、やっぱりパンプキンらぶ。今回も出番は少なかったですが、それでも9巻で足りなかったパンプキン分を補充できて満足。つーか、裏表紙の人形がかなり本気で欲しいと思う今日この頃。

 話の本筋に関連しては、ラトロア編への助走段階という感じなので、面白いけれど特に言うことはなく。ああそういえば、リセリナたちにはこの世界の秘密が開示されましたが、完結時にはフェリオたちこの世界の人間、ひいては読者にも明らかにされると期待していいのでしょうか。……あと、今回メビウスの話を聞いたことで、某人に裏切る可能性が出てきたような気がするようなしないような。

 さて、いよいよラトロアへと向かうこととなったフェリオたちですが、果たして彼の地では何が待ち受けているのか。続刊が普通に楽しみです。

 3/20 『鋼殻のレギオス』[雨木シュウスケ/富士見ファンタジア文庫] →【bk1

異形の汚染獣たちが闊歩し、人類は意識を持ち歩行する「自律型移動都市(レギオス)」で暮らす、大地の実りから見捨てられた世界。学園都市ツェルニに一般科の新入生としてやってきた少年・レイフォンは、入学早々に起きた騒動のため武芸科に転科することになる。さらに、勝気な少女ニーナが率いる自衛小隊に配属されることになり……

 BK1で「<骨牌使い>の鏡I」と他1冊を買い物かごに放り込み、送料無料にはあともう1冊いるなーと適当に物色した結果、なんとなく購入してみた1冊。

 感想。普通に面白かった、という感じですね。主役のレイフォンはほぼ最強に近い実力があるのにとある事情でそれを出そうとしない&あれこれ悩みすぎなのがやや鬱陶しくはありますが、その分終盤で様々な要因に後を押されて悩みを(一時的にかもしれませんが)吹っ切り戦場へと身を投じる場面で拍手を送りたい気分になりました。
 また、個性豊かな女性陣も話に彩りを加えてくれるのが嬉しいところ。それぞれが単なる添え物ではなく、レイフォンにとって欠くことのできない役割を担ってるところも良いですね(……ところで、正ヒロインって誰なんだろう?) 一方、男性陣はというと……えぇと、次以降の活躍に期待ということで。

 調べてみたら、隔月で3巻までは続刊の発売が確定しているようで。この1冊だと消化し切れていないところや投げっぱなしになった設定なども見受けられるので、とりあえず続きも買おうかと思います。

 どーでもいい独り言。主人公が終盤に使った必殺技というか武器というかで、某煎餅屋を思い出したのはきっと私だけじゃないはずだ。

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