■ 2002.10月読書記録

 10/1 『きっとマのつく陽が昇る!』[喬林知/角川ビーンズ文庫]

 お馬鹿なギャグ満載で突っ走る「マルま」シリーズ6冊目……ですが、今回は少々趣が異なっています。

 正直、微妙な路線変更のおかげでこのシリーズの持ち味が幾分減少しているように思えました。結構重いテーマも馬鹿みたいなノリで吹き飛ばす、というのがこのシリーズに対する私の印象なので……まぁ、予想外にシリアス色が強くなったので、ちょっと戸惑ってしまったのかもしれません。でも、シリアス展開だと間のギャグが目につくんだよなぁ。とかなんとか言いつつ、終わりが終わりなので続きは気になります。

 キャラの話。初っ端から、次男がとんでもないことになってますな。無事……だとは思うけど。この事件後、三男坊が喚き散らしていたのがなんとなく嬉しい。残念ながら長男は影が薄かったけれども、その分裏でフォローしてくれてるんだと思っておく。それから、赤い魔女は相変わらずで良かったです(笑) あと今回は、なんといってもユーリと一緒に異世界に来てしまった村田君(通称ムラケン)でしょう。こいつ、絶対ただものじゃないし。つーか、ユーリも少しは怪しい思えよ(これでやっぱりただの一般人だった、ってオチだったらそれはそれで作者を尊敬する)

 10/1 『レリック・オブ・ドラゴン イスカウトの相続人』[真瀬もと/角川ビーンズ文庫]

契約上の主人・アンセルムの命令で、ウェールズにあるイスカウト城を訪問することになったロルフ。この城には「真実の鏡」と呼ばれる遺宝が眠っていて、その宝物に触れようとするものは「城憑き」イスカウト――初代城主イスカウト・アプ・グリフィズの呪いを受けるという伝説が残っていた。

 第一次大戦後の英国を舞台にしたゴシック・ロマン2冊目。絡まっていた因縁の糸はときほぐれたのかと思いきや、そうは問屋が卸さなかったようで……まぁとりあえず、かっこいいアンセルムが見られたので個人的には満足でしたが。タフタフも相変わらず可愛かったし。

 ロルフの持つ能力は、完全に開花すれば希少価値が高い上に有用なものらしく、今後も様々な人物が狙ってくることは必至。……唯一残された「家族」であるロルフを、なんとか自由にして真っ当な人生を歩ませたいと願うエドガーが少々不憫ではありますね。でも、エドガーは少し過保護に過ぎると思う……一歩間違えればヤバイぞあんた、みたいなツッコミをつい入れてしまう私は心が相当狭いかも(^_^;
 それから、ゲスト(?)のレディ・アロウェイことダフネが可愛かった。マンガになりますが、「伯爵カイン」シリーズ(由貴香織里)のマリーウェザーみたいな印象で(こまっしゃくれたところなんかが似てると思う) いっそ、本当に家出してフェイン家に転がり込んできてくれない?と言いたくなるぐらい(笑) ……だってさ、結構好みで面白い作品だけれど、メインに一人も女性がいないのが寂しいんですもの(エリオットはレギュラーなのかまだ微妙だし)

 今後の展開では、やはりディ・エムリスが助力するハワード教授たちの計画が一体どういったものなのかが気になるところ。ついでに、アンセルムとエドガー、そしてロルフの三者の関係がどうなるのか……というか、エドガーとロルフがアンセルムに友好的になるのかも注目でしょう(笑)

 10/2 『スパイラルカノン 狩人は夜に目醒める』[朝香祥/角川ビーンズ文庫]

ある日、病院で目を覚ました大学生の羽住一帆は、頭を打ったのか記憶がいくらか欠落してしまっていた。その彼の前に現れた香ノ倉悠惟と名乗る少年の話では昨夜彼の「仕事場」に入り込み、倒れていたらしい。その後、済し崩しに彼と交流を続ける羽住だったが――

 あらすじ読んで、コバルト文庫から発売されている『高原御祓事務所始末記』みたいな話かな、と思っていたんです。のほほんとしながらも芯が強く、お人よしで包容力のある青年が、複雑な事情を持つ少年をサポート&癒していく、みたいな(こう書くと誤解がありそうなので言っておきますが、『高原』はそっち系じゃありませんので。あしからず) 実際、キャラ配置も似てるなぁ、と思いつつ読み始めたんですが……途中の羽住の行動でおや?と思い、後半どんでん返し。この人、こういうタイプの人間も書けるのね……と妙にしみじみと思ってしまった。つーか、陰になっている部分はかなりドロドロしてそうなんですが(汗)

 今後どうなるのか、普通に気になる作品です(でも、『高原』の続きも読みたひ。あのほんわかした雰囲気が好きなんで。ついでに『キターブ』はまだかーっ!)

 10/2 『恋ヶ淵 百夜迷宮』[たつみや章/角川ビーンズ文庫]

時は享保年間の江戸。札差・伊勢倉屋の手代を務める竹二は、ある日主人から若旦那・松太郎の目付役を命じられる。ただのお気楽道楽の放蕩息子に見えるこの若旦那、「幽霊や妖怪が見える」と言い、奇矯な行動を繰り返す。松太郎の話を信じていない竹二だったが、ある事件に首を突っ込んだことから、彼自身も不可思議な出来事に巻き込まれてしまうことに。

 イラストに魅かれ、作者名を確認。「たつみや章」名義だから大丈夫だろう、と判断して購入しました(いや、別名義だとちょっとやばいので……)

 話自体は極シンプル。あらぬ嫌疑をかけられた馴染みの屋台蕎麦屋を助けるために奔走する話。ただし、そこに妖怪など人とは違う存在も絡んでくるので、単純な探偵モノとはなりません(それらがなくてもミステリ系の要素はほぼ皆無だったけど) まぁ、松太郎&竹二のコンビに加え、意外と面倒見が良かったりする猫又の梅吉のドタバタを眺めつつ話を楽しむのが一番かと。

 文章はさすがにこなれてて読みやすいし、話も割と面白かったので、続編が出たら買ってもいいなと思いました。

 10/21 『エンジェル・ハウリング6 最強証明――from the aspect of FURIU』[秋田禎信/富士見ファンタジア文庫]

 「エンジェル・ハウリング」シリーズ、今回は破壊精霊をその身に宿した少女・フリウの物語。つーか、既に半分以上話の内容を理解してないと思われるのが、我ながら情けないですな(泣笑)

 ……えぇと。話はゆっくりながらも着実に進んでいる、のですよね。伏線の回収にかかっているような箇所も見受けられなくもないし(比例して謎も増えてる気もしなくもないけど)、なにより5巻のあとがきによれば、残すところ4冊なわけだし。なのに全然そんな気がしないのは、私の理解の追いつかなさか……(凹)

 落ち込んでても仕方がないので話題転換。ついにというか、精霊アマワとフリウが接触したところは、見所になるでしょうか。契約者ではない彼女がこの謎の精霊にどのように関わっていくのか、また、彼女に関わる人々が何を望んでいるのか……予想してもこれまでの話を十分理解していない以上絶対外れそうだから、素直に続刊を待つことにします。……完結したときには、「あぁこういうことだったのか」と理解できるといいなぁ(遠い目)

 どうでもいいけど割に真剣な疑問。スィリーの存在って何か意味があるのでしょうかね?

 10/22 『ザ・サードVI 異界の森の夢追い人(プロメテウス) (上)』[星野亮/富士見ファンタジア文庫]

 文明崩壊後の世界、辺境の砂漠で生きる何でも屋の少女・火乃香を描いた「ザ・サード」シリーズ、約2年ぶりの本編。

 今回も謎の男クエスが裏で働きかけ、解放されたロストテクノロジー(とは違うけど。まぁ言葉のあやということで)が話に絡んできてます。しかも、限定的(?)ながらも生命体を含めた独自の世界を構築できるような物騒なヤツが。そのロストテクノロジー「プロメテウス」の世界に取り込まれてしまった火乃香は、密林という彼女にとって未知の空間を彷徨うことに。随分大風呂敷を広げてるっぽい話を、どうまとめるのかが楽しみですね。あと、浄眼機がお気に入りな私としては、下巻では火乃香と組んで彼なりの活躍(戦闘面には期待できないから、後方支援でOK)をしてくれる事を期待してます。火乃香と別行動のボギーとパイフウも、どういう感じで絡んでくるのかなー。他にも色々と気になるし、早く続きが読みたいです。

 話に関係のない呟き。しずく、姿は変わったけれども元気にやってるみたいで一安心。しかし、B.B.もすっかり「頼れるお兄さん」になってるなー(笑)

 10/23 『クロスカディア3 風ワタル地ノ放浪者タチ』[神坂一/富士見ファンタジア文庫]

 クロスカディア3巻目。地味は地味だけれど、それなりに面白くなりつつあるような気もします。
 簡単なあらすじは……謎の少女・メイは、彼女を狙うディーヴァ族から逃れてドラグノ族であるレゼルドの故郷、北大陸・ノーザンガイアへ向かうことに。その旅路に、半ば無理矢理同行することになったシン。しかし、ディーヴァたちの襲撃は続き――と、こんな感じ。

 今回は、封印されていたメイの力が一部解放。誰にもその力を振るっている時の姿を見られなかったわけですが……さて、彼女は一体何なんでしょう? もう一方の主役・シンは、前巻までのレゼルド並に役立たず。まぁ、基本的に一般人だから仕方ありませんが(笑) しかし、今回メイに「治療」された右腕には、何か特殊機能がついてたりするのかな、とちょっと楽しみな私は鬼かもしれません(^_^;

 ラストはまたなにやら不穏な感じ。らふりふ(←略すな)はメイから離れないとして、本来の姿に戻ったレゼルドの去就が気になるところ。……シンに関しては、例え一旦逃げ出してもまた戻ってくるタイプと踏んでるのでその点では心配していなかったり。
 ところで。結局メイの記憶はどうなってるんだろう?

 10/25 『D/dレスキュー ラスト・ミッション』[一条理希/集英社スーパーダッシュ文庫]

 大財閥私設のレスキュー部隊の活躍を描いたシリーズ・いよいよ最終巻。

 全体的には悪くはなかったのですが、紫龍がらみの話がやや無理矢理に感じられましたかね……拍子抜けしたというか、「え、決着こんな風につけちゃうの?」みたいな。いっそ、今回はバイオテロとどう闘うのかに焦点を絞って、紫龍関係はもう一作書いて片をつける、とかにしてくれれば良かったのになぁ、と少し残念。

 ラストは、まぁ順当なところかな。「上手く収まりすぎだー」と少し思ってしまいましたが。なにしろ、最近は現実が現実ですからね……(遠い目) 勿論、小説の中ぐらいはハッピーエンドでいい、と思います。けれど……なんか、こうもまとまると釈然としないっつーか。もうちょっとぐらい「現実の厳しさ」が含まれててもいいんじゃないかな、と。これは個人的嗜好ですけれどね。

 10/31 『月と闇の戦記(二) 守護者はぶっちぎり。』[森岡浩之/角川スニーカー文庫]

 『月と闇の戦記』、約一年ぶりの2巻です。どうでもいいけど、この表紙は如何なものかとちょっと思った。

 うーん、やっぱり展開がスローテンポな気が……次巻からは、盛り上がりそうな雰囲気だけど。もう少し展開早くしてくれればありがたいなぁ。

 敵方の美和さん。正体候補に考えている神様は一応居るのですが(つーか、八雷からこれしか連想できない)……日本神話にはあまり詳しくないのであまり自信がない……知らないエピソードも結構あるからなぁ。まぁ、目的も含めてそのうち明らかになるでしょう(←適当)

 余談。ツユネブリが少しだけ喋ったのが嬉しい。やっぱりこいつが喋らないと、会話が物足りないみたいです(^_^;

 10/31 『ホラー・アンソロジー 悪夢制御装置』[角川スニーカー文庫・ミステリ倶楽部]

 …………懺悔。乙一氏が書いてなければ絶対に視界に入れたくもないような表紙を書店で見た瞬間、心の中で思いつく限りの罵詈雑言を出版社に奉げてしまいました。ごめんなさい。でも本当に、勘弁して欲しかったよこれは…………とりあえず、カバー常備決定ですな(自棄笑)
 まぁそれはさておき、各作品の一言感想。最初に断っておきますが、私いまいちホラーが何たるかを認識できない(さすがに某13日とかぐらい分かりやすければ分かるけど)&怖がれない性質なので、その辺りご寛恕願います。

森の中のお城で暮らす、ジェルソミーナ女王。彼女の城では、かつて惨劇が起こっていた。(「ふたり遊び」 篠田真由美)

 えぇと、ある意味篠田さんらしい作品だなぁ、という感想。それ以上に言いようがないですごめんなさい。しかし、これもホラーに分類される作品なんでしょうか。全くそれらしい要素が認識できなかったんですが、私……

消えた友人アカネを探す、ナオトとユリカ。彼女が監禁されているのでは、と忍び込んだ廃工場で遭遇する戦慄とは(「闇の羽音」 岡本賢一)

 題名と表紙&口絵から嫌な予感がしたので悩みましたが、とりあえず挑戦しようと数ページは読みました。が、途中であっさり挫折。正確にいうと、それ以上読めませんでした。今後も読める可能性は限りなく0に等しいです。……奴等、トラウマ形成の一大要因なんで……(震)

映画研究会の高校生3人が夏の高原で出逢った美少女。主演女優に逃げられていた彼ら、是非とも自主制作映画のヒロインにとスカウトするが、実は彼女は……(「ラベンダー・サマー」 瀬川ことび)

 ホラー……といえばまぁそうなる話なのでしょうが。個人的には、爽やか青春な話だなぁと思いつつ読みました。彼女の正体を知っても怖がるどころか嬉々として撮影を続行する由起夫が面白かった。結局、彼女がどういう事情でそうなったかは謎のままでしたが、その分余韻が強く残ったような感じ。ラストも綺麗にまとまっていたと思います。

幼い姉妹にとって、一階は死の国に等しかった。妹は奈落へ繋がるかのような階段を怖がっていて……(「階段」 乙一)

 これもホラーに入るのかと首を傾げつつ、人間の暗い面を淡々と書きあらわしている点がそうなのかもなぁ、と思ったり。やはりホラーっていまいち分類基準が分からないです……。

 さて、今回はDVの話でした。個人的印象としては、『死にぞこないの青』よりは痛くありませんでしたが、それでもありえそうな話でやはり痛かった。何度か決定的な悲劇が起こるんじゃないかと冷や冷やしましたし、話の中盤、ある出来事をきっかけにバランスが崩れだしたときには……最悪の最悪まで考えてしまいました。だから、結末はある面で救われていると思うのですが、なんだかもやもやが胸に残ってる感じ。悲劇的な結末ともいえるから、当たり前かもしれませんが……姉妹の脳裏からけして消えないだろう光景が、そのまま読者の気分を覆い尽くしているんでしょうかね……

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