第1回ビーンズ小説賞の奨励賞&読者賞受賞作。先月、先々月に引き続き投資目的で購入。
個人的には、ビーンズの新人さん3人の中で一番良かったと思います。ヒロインの秀麗が好きなタイプの娘だったので、多少甘めに見ているかもしれませんけれど。その他の登場人物も、まぁ割とお約束ーと思わなくもないけれど皆それぞれに矜持や信念を持っていて好印象。3人の爺さま連中が、なんとなく好きだなぁ。最初のほのぼのと間抜けな会話が楽しかった。
後半のややシリアス展開になった辺りから多少ごちゃついた気がしなくもないけれど、「新人さんだし」で目を瞑れる範囲。基本的には軽いテンポで読みやすい話でした。で、最後はどう落とすのかと思ったら……まぁこんなところか、という感じ。ちょっと残念な気もするけれど、それでも恐らく二人の風変わりな仲良し関係は続いたのだろうと脳内補完しておく。
とにかく、思っていたよりも楽しめて満足でした。次回作にも期待です。
コバルトの「楽園の魔女たち」シリーズで人気の樹川さんの新作。前回ビーンズで発売された作品は個人的には微妙なところでしたが、今回はなかなか面白かったです。
設定自体は怪盗の正体=捜査関係者の身近な人物等、結構お約束。ですが、そんなことを気にさせずに読ませる力があるというか。ちょっと説明不足ではと思う箇所が多々あったり後半にいきなり急展開したりと不満はあれど、ストーリィは普通に面白いのでまぁいいかと(笑)
あと、ベタと言われようが何と言われようが、ミオンとジューロの交流が良かったです。いや、お互いの意識が次第に変わっていく過程が、お約束とはいえツボでしてね……。他の登場人物も割と好き。でも、ジューロの妹ヴィエナやサジェン、グラ婆といったお屋敷関連の人以外はやや印象が弱かったような……特にコーズ・バイス王子関連はちょっと唐突感があったし。彼に関してはもう少し事前に匂わすなりして欲しかったかな。
続編が作れなくもなさそうな幕引きでしたが、ここで完結にしておくのが綺麗だと個人的には思いました。
なんとなく英国贔屓の印象がある作者氏ですが、今回はパリを舞台にした作品。しかも、主人公も初の女性ということで、固定イメージの変化を図ったのかなーというどうでもいいことを考えたりした。
まぁそれはさておき。シユー侯爵のフルネームが出たとき、思わず吹きだしてしまったのはきっと私だけではないと信じたい。つーか彼、一応ちゃんと(?)病弱に書かれてるね……生憎泣き虫ではなかったけれど。でも、私的イメージとは違う方向で格好良いキャラだった為、少々違和感を覚えたり。あぁ、折角ならもっと策略家な彼が見たかった……(←脇役ならともかく、ヒーロー役には向かないって)
彼以外にも、歴史を彩った貴婦人も登場したりしています。そういう意味では結構豪華。しかし、正直肝心の陰謀はややしょぼかったような気がしなくもない。話の内容も分かりやすいというかなんというか、微妙……つまらないとまでは言わないけど。期待しすぎていたのかな。とりあえず次回作に期待。
……お涼シリーズは、ほぼ年一ペースを保ってるんだよなぁ。そのペースを他の作品にももう少し……特にアルスラーンとかアルスラーンとかアルスラーンとか七都市とか(←こっそりまだ諦めてないらしい)
それはさておき感想ですが。舞台はカナダで、やってることは、まぁ、いつもと変わりありません(説明になってない) とりあえず、お涼の無茶っぷりと泉田君の鈍感さを楽しんだ者勝ちと言うことで(笑) 諸々の社会風刺に関しては……いつものことだし流しておいて……あれ、もうこれで感想全部言い尽くせたぞ。えぇと、あえてあと一つ言うなら、今回は敵役がまた一段とへぼかったなーというぐらい、かな?
そしてまた、お涼と泉田君の関係は微妙に進展してるようなやっぱりちっとも進展してないような。最終巻ぐらいには何とかなるのかな、この二人。
……で。予定ではこの次にアルスラーンがくるんですよね? ま、予定通り来年中に読めれば大したものですよねー(なんとなく諦め気分)
特撮モノをベースに展開される、ガーディアン(世間では「正義の味方」と言われている)と謎の組織の戦いに巻き込まれたために人生を狂わされたある青年の物語。うわ凄い、まだ前巻発売から1年しか経ってないのにもう3巻が……って、驚くポイントが何か間違ってるような。
地味ながらも、次第に盛り上がってきた感じ。メインの登場人物も今回で出揃ったようですし、謎の組織ユニコーンの内情も幾らか垣間見えたりとか……。ところで、ユニコーンはやっぱり普通(?)に悪の組織なんですかね。上手く言えませんが、なんかこうもうちょい違うようなイメージだったのですが、普通にやることやってるし。しかし、上層部の人間関係は結構複雑そうなのに比べて、下っ端連中は妙に気楽そうというか、和気藹々と楽しんで生活してるように見えるなぁ……立場とかそういうしがらみがないからですかね?
さて、とうとう後戻りができないところまで進んでしまった貴久。彼の行く道は何処に向かっているのか。次回予告にも気になる台詞が散りばめられていて、続刊への期待が高まるところです。……まぁ、来年中に読めれば上出来の部類でしょうね(達観)
帝国飛行部隊の撃墜王という顔を持つ「魔女」ヒミカ。様々な事情から彼女のもとを訪れた人々の顛末を描く連作短編集第2巻。
話の雰囲気としては前巻とほとんど同じで、後味の悪い話もありそれなりに前向きな話もあり。私は、嫌いじゃないです。ただ、面白いかと聞かれると即答できない自分がいる……。なんだろう、オチが割と読みやすいのが私的にマイナスポイントになってるのかな。
あと気になるのは、やはりキャラの弱さ。なんといいますか、この方ってキャラを完全に支配してしまうタイプに見受けられるんですよね。だから、キャラが暴走して話が破綻することもない代わりに結局予定調和に終わってしまうとでも言いましょうか……そんな感じ。初期作品にはそれでも魅力を持った登場人物がいたのだけれど、この作品はその辺がどうもいまいちで……まぁ、最終的には淡々と進むモノクロ記録映画のような雰囲気を気に入るか否か、でしょうねぇ。
とりあえず、最終話でちょっと新展開をみせてはいるし、期待を込めて次巻も買うつもりですけれど。さて、この先どうなることやら。
文明崩壊後の砂漠と化した大地で、逞しく生きる何でも屋の少女・火乃香の姿を描いた「ザ・サード」シリーズ、短編集2冊目。
面白かったです。特にこれといって突出したものはないけれど、全体的に安心して読めるというか。そんな感じで。また、パイフゥや浄眼機、そしてゲストたち。火乃香と関わったことは、彼らに如何なる影響をもたらしたのか。そして、火乃香自身も様々な出会いを通して、何を得たのか――。そういうことが、多少ですが垣間見えた気がしましたのが良かったですね。
どの作品も割と地味といえば地味な気もしましたが、どうにも話が大きくなりすぎでどんなオチがつくのか心配な長編より、多少地味でもこういう比較的地に足がついた短編のほうが余計なことを考えずに楽しめるから、「まぁいいか」と思ったり思わなかったり。
なんだか地味な印象が拭い去れない「クロスカディア」シリーズ4巻。今回は、結構急展開?
前回、ドラグノ族の住む大陸に渡った一行。これで一息つけるかと思いきや、またもや騒動が起こり逃げ出すハメに。さらに不測の事態が発生し――シンも大きな決断をすることに、と大まかに言えばこういう展開。
設定もそれなりに明らかになって、話が段々と面白くなってきたかな、という感じ。まぁ、こんなに一気に設定を明らかにしないで、もうちょっと小出しに説明してくれればもっと良かったのに、と思わなくもないですけれど。とにもかくにも、主人公たちの目的も決まり、ラスボス(?)の存在も明らかになったことだし今後の展開に期待というところ。
キャラクター的には、(神坂作品の主人公には珍しく)どちらかというとまっすぐな気性のシンやらふりふ(←だから略すな)が、良い感じでした。新たに一行に加わったディーヴァ族のギソウルやリワーダー族の族長も、ちょっと意外なキャラだったりして。次巻以降どんな動きをしてくれるのか、ちょっと楽しみ。……ところで。まさかレゼルドはこのままお役御免なんてことはない……ですよね?
古代中国をモデルにした架空世界で繰り広げられる戦国志、第7巻。あまりに突然だった<征>王、魚支吾の逝去。これを契機に、中原を取り巻く時代の流れは一気に加速していきます。
大体の展開は、<征>の混乱に乗じて遂に大きな動きを見せた<衛>王、耿無影。さらに<征>の謀士が講じた策は、思わぬ事態を<琅>にもたらし――というもの。ここに来て、ようやく収まるべきところに彼が収まったな、という感想です。
その他。淑夜と大牙、程度の差はあれそれぞれ春が到来中。まぁ、幸せそうでなによりです。一方、長い間冬の只中にいる無影と連姫の関係にも、暁華さんによって僅かな変化が。これが彼らにあの結末をもたらしたにしても、私は暁華さんを支持しますね。だって、見てられないもの。あの二人。
混乱の時代の果てに、生き残った<琅>と<衛>の覇権をかけた争い。そして、淑夜と無影の決着の行方。いよいよ話は大詰めです。
「暁の天使たち」シリーズ第6巻。「え、もう完結なんですか。……そうですか」と思わず呟いてしまったのは私だけではないと思いたいところ。
今回の内容は、キレた黒をなんとかしようと皆が東奔西走するというもの(←要約しすぎ) あ、ついでにようやくと言うか今さらというか、敵役っぽい連中も顔見せ。でも、そいつらが三流悪役程度にしか思えないのは多少問題なように思ったり思わなかったり。
読んでる最中は、多少引っかかる部分があってもやはりそれなりに面白いと思うんですが。でも、読後には大した感想が残らないなーと。やっぱりこのシリーズで何がしたかったのか、さっぱり分からない。あとがきによると怪獣夫婦が暴走したために予定が狂ったそうだけれど……個人的には、怪獣夫婦が登場しなかったら泣きたくなるほどつまらなかったような気がするし(もっとも、今回久々に戦闘モードの金やファロット三人衆は良かったと思いましたが。つーか、彼らはやはり学園モノには向かないでしょう) まぁとりあえず、作者さんが主役級のキャラを愛しているのが良く分かったシリーズでした。……冷静に考えなくても、やっぱり同人誌ですよねこのノリは……
さて。次回作こそ、学園モノにするとのことですが……うーん、購入意欲がいまいち湧かない。惰性で結局購入しそうな気はするけど。
追記。何でこのシリーズがこんなに鼻につくのか、すこし考えてみた。結局のところあれですね。好きなコミックのとある登場人物の言葉を借りれば、「姑息に生きてる庶民の誇りを舐めてる」感じが嫌なんだろうなぁ……。
アイルランド独立運動初期を下敷きにした、架空世界の歴史物語2巻。
話の元が元だから仕方がないかもしれないけれど、雰囲気が暗いというか淡々としすぎているというか盛り上がりがないというか。登場人物にもさほど魅力があるとは言えなくて。それこそ役者のように作者に決められた役割をこなしているという感じ。もう少し登場人物の心情にも踏み込んでくれれば面白くなったと思うのに、と少し残念。
ともあれ、ラスト1巻。主役二人の歩いた道がどんな結末に辿りつくのか、それなりに楽しみに待つことにします。
独り言。主役二人のモデルはコリンズだと思っていたけれど、違うのかな。ダグラスはまだしもリィーンは性格的に今後も武力行使を是としなさそうだし。理想のためにゲリラ戦を展開する事になった彼らの苦悩とか意見の対立がメインになると予想(妄想とも言う)してたんだけど。